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工業用シールに万能なソリューションはありません。すべてのアプリケーションには異なる要件、異なる課題があります。このシリーズの最初のパートでは、SKF工業用シールのエキスパートが、グリースの保持力や外部からの異物の排除など、シールを選ぶ際に考慮すべき特性について説明します。
ラジアルシャフトシール(オイルシール)、アキシアルシャフトシール、油圧・空圧シール、そして場合によってはカスタマイズされた切削加工シールなど、様々なシーリングソリューションがあります。しかし、シールが組み込まれる機械の動作条件を正しく理解していなければ、信頼性の高い安全なパフォーマンスを実現することはできません。一般的に、シーリングソリューションは、動作の種類、温度と圧力の範囲、流体媒体などの特定の要因の影響を受けて選定します。シールを選定する際に考慮すべき機能的な側面をいくつか見てみましょう。
1: グリースとオイルの保持
近年のシールは、グリースの保持を目的としています。多くの潤滑剤は高粘度であり、軸に対して無負荷のシールリップ形状のものやVリングを使用することで十分です。しかし、より要求の厳しい用途では、より高いシールリップの接触力で、より強固にシールするため、スプリングにて接触力を強化したラジアルシャフトシール(オイルシール)が必要になる場合があります。オイル、特に低粘度のオイルは保持するのがより困難です。オイルが標準的な粘度の場合は、一般的にスプリングが装着されたオイルシールが選定されますが、例えば油圧シリンダー等のアプリケーションでは、通常オイルシールが選定されることはありません。PTFEなどの一部のシール材では、クリープによる予圧損失を補うためにエナジャイザー(Oリング)、または異なるタイプのスプリングが必要になります。
2: 外部からの異物の排除
作動中に外部からの異物の浸入が気になる場合は、ワイパーシール(ダストシール)等、シールリップを外側にして取り付けることで、重要な部品や潤滑剤から異物を遠ざけることができます。より過酷で汚染度の高い環境では、軸方向のシャフトシールやダストリップを追加したソリューションなど、二次的な保護装置が必要になる場合があります。V-リングは一般的に、特に異物の多い採掘現場などで稼働しているコンベヤの軸受保護等の用途で優れた効果を発揮します。これらのシーリングソリューションは、外部からの異物の浸入に対する二次的な保護手段として使用されることが多く、例えば、オイル保持には適していません。
3: 潤滑油の保持と異物の排除
アプリケーションによっては、潤滑油を保持することと外部からの異物を排除することが同じくらい重要な場合があります。1つのシールでこれらの要件に応えるためには、補助リップが必要になります。この補助リップは、異物の浸入防止効果を提供すると同時に、シールがグリースを保持し、軸受を機能的かつ安全な状態に保つことを可能にします。直線運動を伴う油圧システムでは、通常、複数の要素でシーリングシステムが構成されます。これらは、異物の浸入を防ぐためのワイパーシールと、圧力制御と保持のためのロッド・ピストンシールを組み合わせています。より過酷な条件での回転運動用端面シールとして、堅牢性の高いメタルフェイスシールが適用されることがあります。ただし、合わせ面の摺動速度が許容範囲内であることを確認することが重要です。
4:流体の分離
掘削機に組み込まれているロータリージョイントのような一部のアプリケーションでは、2種類以上の流体を分離させる用途があります。これに対し、大きく分けて2つの方法があります。1つ目は、2つのシールのリップが逆向きになるよう、同一のシール2つを背面合わせで使用して密封する方法です。2つ目は、逆向きに2つのリップが配置されている1つのシールを使用する方法です。どちらのリップにもスプリングを装着することで、より効果的に流体を分離することも可能です。また、スプリングを使用しない複動式のデザインもあります。これらは、スプリングの代わりに弾性体のエナジャイザーを使用します。これらのタイプのシールの例としては、SKF切削加工シールのR09およびR10シリーズがあります。
以上が、シールの選定に関するシリーズのパート1です。異なる動作条件に適したシーリングソリューションの選択についての詳細は、SKFのウェブサイトをご覧ください。次のパートでは、軸径と回転速度、圧力差、スペース制限、設置制限をご紹介いたします。
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